植物に宿る朝露を見て、宝石の煌めきに似た美しさを感じることがある。
たしかに屋久島での暮らしなら、それはさして珍しいことではないかもしれない。
雨上がりにはよくある情景であるだろう。
今日はちょうどお二人のリングの磨き作業を終えて、そのリングにセットする石を用意していたタイミングだったのだ。
その石をピンセットで挟んで眺めた時、不意に朝の情景と重なり合ってしまった。
綺麗だった。
魅せられた、と言った方が近いかもしれない。
わたしはお二人が選んでくれたアレキサンドライトを眺めていたのだ。
宝飾品を作り始める少し前の頃、旅をしながら各地で天然石を買い集めてシンプルなアクセサリーを作って暮らしていたことがある。
そのような旅を続けるうちに気がつけばこう思うようになっっていた。
本格的なジュエリー作りを職業にするれば、大好きな石をずっと手にしていることができるだろう。
アレキサンドライトは変色性を示す鉱物である。
日光や蛍光灯の下では緑がかった青色となり、白熱灯やローソクの光の下では紫がかった赤色となる。
お二人には数種類の天然石をリクエストいただいてサンプルを送りしたりしてセレクトをしてきたのだけど、お揃いで一粒ずつのアレキサンドライトをセットすることになった。
これまでいくつものジュエリーを作ってきたわたしにとって、初めてセットすることになるアレキサンドライトを手にすることができるのは素晴らしい体験でもあった。
こんなにも小さい石の中に素晴らしい個性が詰まっている。
自然の中に漂う神秘のようなものに今でもずっと魅せられている。
お二人とは大切なフィーリングで繋がっているように思う。
実に多様性に満ちた今だからこそ、一つ一つの出来事や出会いに心を澄ませていたいと思う。
さて、気がつけば長い道のりをお二人と一緒に歩いてきた。
結婚指輪作りはこれから彫刻作業、石留め作業へと進むことになるのだけれど、
それはまた別のお話で。
考えてみるともう何年も前にジュエリーと出会ってくれていた指輪作りですものね。
最後までゆっくりと楽しんでいきましょう。
出来上がるのは北海道に春が訪れる頃でしょうか。
完成編はもう少し先のお楽しみに!
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