島に訪れる初夏の気配をすぐそこに感じながら、作業机に向かっている。
梅雨の真っ只中のはずなのに、今年は驚くほど晴れの日が多い。
作業の合間に庭先へ出てみると、木陰に入らないと暑すぎるほどで、木々の隙間から通り抜ける日差しが眩しかった。
眩い輝きに包まれた、プラチナリングの印象。
キラキラと輝くこの南国めいた日々は、お二人の結婚指輪作りに、ちょうど良いタイミングだったかもしれない。
ジェリーに使用する金属の中でも、プラチナは独特の色調と、コントラストの強い輝きを持っている。
影になる部分はどこまでも深く、光は眩しいほどに、銀白色に抜けてゆく。
光沢仕上げで磨き上げると、鏡のように、まわりの世界を映し出すのも、好きなところだ。
その輝きは、潤いをたたえた水のようでもあり、同時に、夜空に散りばめられた星屑のようでもある。
光そのものを手にするような感覚は、あるいは、時間を纏う体験なのかもしれない。
大切な想い。時の流れ。希望の響き。
おふたりとともにあるプラチナリング作りは、いかに。
酸素トーチに火を灯し、プラチナリングの両端を接続する作業に取り掛かる。
1500度を超える炎の中で、オレンジ色になるまで温度を上昇させ、つなぎめに融点の低いプラチナを流し込む。
この時、プラチナからは相当眩しい光が放たれるので、室内を暗くし、遮光のサングラスをかけて作業を進めなくてはならない。
高温での工程を終えると、プラチナリングは初めてひとつのものとなり、強さを手に入れる。
とてもシンプルな作業ではあるけれど、結婚指輪作りにおいて、強度を決定する大切なところだ。
これから始まる新しい日々の中で、長く安心してお使いいただけたら、嬉しい。
プラチナの接続作業がひと段落し、ほっと一息。
太陽の光の下で、そのシルエットを眺めておく。
まだまだ金属の塊ではあるけれど、いよいよ造形作業のスタート地点に立った、というところだ。
これから鉄鋼ヤスリを片手に、ガリガリと造形作業を進めていくことになる。
硬くて冷たいプラチナに、昼間の木漏れ日のようなあたたかさを宿せたらと思う。
ふと、足元に目をやると、ネコが木陰で佇んでいる。
どうやら昼寝をしているようだ。
遠くからは、風に乗って海の音が聞こえてくる。
そういえば、土曜だ。
少しずつ、少しずつ、
島の何気ない日々が、今日も織りなされてゆくのだった。
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