リングの造形作業を無事に終えると、島には夏の気配が漂い始めていた。
空は青く澄み渡り、南国の日差しを受けて、雨上がりの雫が強く輝いている。
春先にお二人とお会いしてから、季節をひとつ通り抜けてきたのだなあと、シャンパンゴールドのリングを眺めながら、しみじみと思い返していた。
緑の中にリングをかざすと、葉の隙間を通り抜けた光を受けて放たれる煌めきに、思わず魅入ってしまう。
葉っぱは風に揺られ、影になったり、光に包まれたりを繰り返す。
それに応えるように、シャンパンゴールドが色合いを変え続ける。
光の強さによって、その表情を多様に変化させるのが、ゴールドの素敵な魅力だと思う。
相談会の日、アトリエでお二人とサンプルリングを囲んでデザインを考えていたとき、そこにはこれといったルールや方針のようなものは、なかったように思う。
お互いの個性を大切にしながら、そして寄り添いながら、ひと組のリングをともに作り上げてきた。
彼のリングは、丸く、柔らかなフォルムに。
彼女のリングには、表面に切り込み模様を施して、リズミカルな印象に仕立てた。
このあと、さらにお互いに変化を加えながら、仕上げ作業を進めていくことになる。
少しずつ異なっていて、それがかえって一層、お揃いの雰囲気を深めてくれているような、
そのようなお二人のリングが、わたしもとても好きだ。
雨上がりの早朝。
庭先には、力強い虫の音が響いている。
わたしはリングを眺めながら、その小さな輝きをお二人の印象に重ね合わせている。
散歩から帰ってきたお隣さんが、「おはよう、暑いねー」と言いながら、日傘をさして前を通り過ぎていった。
今日も、島の何気ない日々が穏やかに営まれてゆく。
その中で、お二人のリングもまた、たしかに育まれてゆくのだった。