重たい湿度が、島をすっぽりと覆い尽くしている。
それでも、雲の合間から陽光が差し込むと、山々の稜線が輝き出し、汗ばむほどの暑さを感じられた。
今日も、気温が高くなりそうだ。
そう考えながら、早朝から作業机に向かっていた。
薄暗くしたアトリエで、酸素バーナーにカチリと火を灯す。
造形がひと段落したばかりのシャンパンゴールドのリングを炎で包み、真っ赤になるまで温度を上昇させていく。
まずは最初の第一歩だ。
金属は、焼きなますと柔らかくなり、叩いて圧力をかけると、再び固くなる。
そのコンディションに変化を与えながら進めてゆく工程は、生き物と向かい合っているかのようで面白い。
シャンパンゴールドが緊張を解くように、少し柔らかくなったところで、リングに緩やかなカーブを与えていく。
鉄の枠に当て、木槌を使って、コンコン。
芯金に通し、円形を整えるように、コンコン。
彼のリングには、少し強めのカーブを。
彼女のリングには、なだらかなカーブを与えていく。
リングに滑らかな流れのようなものが宿るように、
手の感覚だけを頼りに、造形を進めていかなくてはならない。
理想とするフォルムの美しさは、いつも島の自然の中に眺めている。
ゆっくりと、少しずつ、繰り返す変化を前にすると、
リングを育んでいるような気持ちになる。
一通りの作業を終え、リングのシルエットを窓際に差し込む光の中で眺めた。
シャンパンゴールドの穏やかな色彩が、島の緑と静かに響き合っている。
外では、また雨が降り始めていた。
しとしと雨音の中でリングを眺めていると、そのフォルムが心地よくて、湿度の中にすっと溶けていきそうな気がした。
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