
ころりと丸く仕立てたシャンパンゴールドの石枠を、細いリングに組み合わせているところ。
この瞬間は、おふたりの指輪づくりの中でも、とりわけ集中を要する場面かもしれない。
中心をしっかりと見定めながら、微細な調整を加えていく。
納得のいくバランスに出会うまで、何度でも繰り返す。
やがて、然るべきポイントが訪れたとき、心の奥から自分自身の声が聞こえてきた。
「ここしかない」と。
長い指輪づくりの間には、秋の色彩に包まれた森を歩いたりもした。
いつだって寄り添っていてくれる屋久島の季節に、ありがとう。
シャンパンゴールドのリングは、水がテーマになっていて、
リングの表面と石枠には、小さなドットを散りばめるように仕立てていく。
雨上がり、庭先にキラキラと輝き宿るダイヤモンドの雫のように。
ホワイトゴールドがまとうダークトーンには、どこか夜の静けさのようなものが感じられる。
彼のリングにはタンザナイトを埋め込むようにセットして、すっきりとシャープな印象に整えたい。
優しく降り注ぐ雨も、どこまでも静かに広がる夜も、
どちらも島の暮らしで馴染み深い時間だ。

夕暮れ時には、無事に石枠とリングを組み合わせることができて、
綺麗に磨き上げた二本のリングを、太陽の光の下で眺めてみた。
そばに置いたダイヤモンドとタンザナイトが陽光を反射して、リングの表面にふたつの虹を映し出していた。
これまでおふたりとともに育んできたイメージが、初めて確かな形になった瞬間だ。
ずっと寄り添い、励ましていてくれた屋久島の小さな祝福に触れたような気がして、胸の奥があたたかくなった。
このあと刻印の工程を挟むため、作業はここでひとまず一区切りとなる。
リングを大切に保管したところで、時計はちょうど5時前を指していた。
まだ間に合うかもしれない。

アトリエから車を走らせ、いつものビーチに辿り着くと、ちょうど太陽が水平線に隠れようとするタイミングだった。
この場所から、沈みきるまでの時間が、とても早い。
作業は、ここまで実にうまく運んだ。
気持ちはどこまでも清々しい。
世界がどんどんオレンジ色に染まっていく。
昼がやがて夜に変わる。
雨が降って虹が出る。
おふたりのリングは、自然が生み出す美しい時間そのもののようだな、と思う。
その小さなふたつのフォルムに、どこまでも広がる永遠を感じながら。

オーダーメイドのお問い合わせはこちらまで
hp@kei-jewellery.com
tel: 0997-47-3547
