お二人の結婚指輪作りがひと段落すると、島ではサキシマフヨウが満開になっていた。
数年前の台風で一度倒れていた芙蓉の木が今年になって元気を取り戻したことも、倒れたことでかえって花を目線に近い場所で眺めることができたのも嬉しかった。
お二人もアトリエのすぐ前に芙蓉の木があることはわからなかっただろうなあ、と会いした夏の日を懐かしく思いながら。
リングを手の中にそっと収めて眺めてみる。
冷たくなってきた朝に、シャンパンゴールドとイエローゴールドのリングに降り注ぐ秋の太陽が心地よかった。
2.3mm幅。彼女のイエローゴールド。
指先に収まる小さき愛おしさよ。
彼のリンングと重ね合わせてみる。
こんなにもサイズが違っていて!なんだか微笑ましくなる。
イエローゴールドは太陽の光と同調してとても明るく見えた。
シャンパンゴールドは島の自然に溶け込んでいるように優しく見えた。
そのような二つの金属の響き合いが、今はとても趣深く感じられる。
左手の薬指につける結婚指輪を左手のくるり指につけるのは、そこが身体的に弱い箇所だから、という話を聞いたことがある。
あるいは、リングが何かを補ってくれるものだとしたなら、イエローゴールド的な朗らかさは実は彼の中にあって、シャンパンゴールド的な和やかさは彼女が持っているのかもしれないな。
そんなことを思い巡らせてみては一人で楽しくなっている。
相談会の時もそうだったけれど、
素材を選ぶときは考えることなく、まるで直感に導かれるようにすっと手が伸びるのが面白い。
理屈ではなかなか言い表すことができないけれど、かえってそれが信じられることってあるように思う。
そう考えてみると、金属との出会いもまた、わたしたちの出会いと少し似ているところがあるのかもしれない。
偶然のような、必然のような巡り合いにありがとう。
大空を羽ばたく鳥たちがすれ違うくらい奇跡的な時間の中で、お二人の結婚指輪は生まれつつある。
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