屋久島サウスのアトリエです。
イエローゴールドのリングとプラチナの花を一つにすると、小さな息吹が初めてそこに生まれる。
今日はとても大切なところ。
リングの中心に、真っ直ぐに収まるように花を配置しておく。
何度も細やかな調整を繰り返して、ようやく理想的な角度に揃えることができた。
遠巻きに眺める佇まいは美しい。
動くことなくぴたりと安定している。
きっと今が最適なポイントだ。
そして炎の中に包み込み、イエローゴールドとプラチナの温度を上昇させていく。
二つの金属の間には、ほんの少しだけ融点の低いゴールドが添えてあり、ある一定の温度まで達すると、その融点の低いゴールドだけが溶けて花とリングの間に流れ込む。
そのようにして金属同士を繋ぎ合わせていく。
はるか昔からずっと変わらない手作業である。
それだけに、手と作品との距離が近しい、というのだろうか。
作り手の呼吸や間合いのようなものがはっきりとリングに投影されるのは、
とても美しきことであり、同時にシビアなタッチが要求されることでもある。
その“呼吸や間合いのようなもの”を育むものは、作業の現場であるよりかは、あるいは日々の暮らしの中にあるのかもしれない。
毎日を真っ直ぐに生きていく。
なんとも遠回りに思えるシンプルなことが、実は一番の近道だったりもする。
お二人に出会って、デザインを作り、指輪を形作っていく間に島の季節が移ろいでゆく。
そんな時間を分かち合えることも嬉しい。
そういえば、最近は眺める植物たちの色彩や輪郭が力強くなってきたような。
暑く感じる日も多くなってきて、梅雨の先にある夏の気配を時折感じながら。
森のイメージが強かった屋久島に来てハイビスカスに出会ったのは、嬉しい驚きだった。
今日も私はジュエリーを作り、猫たちはアトリエの周りを散策している。
ルーペで細部を眺めておく。
紙やすりで丁寧に磨き上げて、花びらの揺らぎを生み出していく。
いよいよ作業も仕上げの段階だ。
気持ちの良いバランスに出来上がったように思う。
彼女と相談をして、花のサイズを小さく調整したのも良かった。
リングには透明な黄色の石をセットする予定だけど、それはもう少し先の楽しみにしておきつつ、
これから彼のリング作りにバトンをタッチすることにしよう。
カラスシャーレの中にそっと置いたリングの佇まいを愛おしく眺めている。
確かにここに、小さな息吹が芽生え始めている。
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