屋久島サウスのアトリエです。
彼女のリングは造形作業がひと段落した。その流れに乗って彼のリング作りへ。
今日が明日へと繋がるような、なめらかな結びつきを目指して。
彼女のリングには12個のピークを持つ波の模様を施したのだけれど。
「もう少し緩やかなカーブが好みです」とデザイン作りの際に彼が言ってくれたから、
これから作る彼のリングには8個のピークで波模様を施していくことになる。
直感に従うように少しずつ道順を変えながら進んでゆくことができるのは、オーダーメイドならではの楽しさだと思う。
時には想像もしなかった場所にたどり着くことができるのだから凄い。
そう考えると、今手の中にあるプラチナリングが小さな奇跡のようにも感じられる。
お二人と、屋久島の季節と、私との出会いに感謝しながら。
作業机に用意したのはヤスリ大を2本とヤスリ小を1本、そしてルーペを2つ。
ヤスリはそれぞれ目の荒さが違っていて、ルーペは同じものだけれど、すぐどこにあるか分からなくなるのでいつも多めに用意しておくスタイルである。
カメラだったりレンズもそうなのだけれど、個人的には手と作品の間にある距離のようなものをできるだけ短くしていたいので、道具も自然とシンプルなものになってきたように感じている。
えいっ、と引き出しを開くとそこにヤスリが5本ほど並んでいるだけなら、あとは想像力を駆使するしかないのである。
あるいはそれは、イマジネーションのトレーニングのようなものなのかもしれない。
ジュエリーを形作るものはたしかに“道具”ではあるのだけれど、その向こう側に広がるカタチのない何かを大切にすることができたならば、作り手としてより長く走り続けることができるのではないかと思う。
ここ最近はアトリエから海まで続く小さな森を歩くのがお気に入り。
作業の合間にこうして太陽の温もりを求め歩くようになると、ああ冬が近づいてきたのだな、と思う。
木々の合間から降り注ぐ光がとても眩しかった!
彼のプラチナリングを包む大きな波のリズム。
まだ荒い仕上がりの表面に映る屋久島の緑。
指先に感じられた質量。
お二人の大切な想いが一つのリングになって、今確かにここにある。
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