久しぶりによく晴れた朝だった。
山々を覆っていた薄い霧は海からの緩やかな風に吹き払われていった。
そこにある空はクリアで力強く、来るべき夏の気配を漂わせていた。
窓の向こうを眺めていると、ドラマティックな映画上映を観ているようだった。
ときおり飛行機雲がすっと山の向こうに伸びてゆく。
空気の澄み具合によってよく見えるときがある。
美しき屋久島の朝だった。
アトリエでは新しい材料を作業机にを用意して、新しい作業を始めることにした。
彼のプラチナと彼女のシャンパンゴールド。
最初はまだ硬さを帯びていて手触りも冷たかった。
けれどもその2本の金属を鉄の芯金に添えてくるりと巻くと、そこにほんの少し温もりが宿ったように感じられた。
そしてまた雨がふりはじめた。
ときおり雨は激しく窓に降りつけて、その音に呼ばれるように様子を眺めに行く。
その勢いは梅雨の頃よりも瞬発浴が凄くて、激しい。
少しずつスコールの気配を帯びてきているように感じられた。
シャンパンゴールドとプラチナは炎に包んでその両端を互いに繋ぎ合わせた。
ちょうど雨が弱まってきたようだったので、2本のリングを持って庭先で眺めることにした。
雨上がりの深い緑に包まれてゴールドとプラチナはとても静かで、気持ちよさそうに見えた。
色彩のコントラストもいっそう際立っている。
もともとはこの大地から生まれた金属なのだ。自然とはとても相性が良いものだと思う。
このフィーリングだ、と思った。
お二人の結婚指輪はとてもシンプルなスタイルで仕上がる予定なので、
形の向こう側というのだろうか、
この大地から伝わる心地よさのようなものを直接的に感じていただけるのではないだろうか。
リングにはお二人の暮らしに寄り添う安らかな温度感が生まれるようにタッチを積み重ねていこう、
そのような進むべき工程のイメージを持つことができた。
素敵な始まりを迎えることができたように思う。
今日はここまでだ。
そして明日にはまた新しい気持ちでここまでの道のりを、少しだけ遠くから眺めなくてはならない。
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