海までの道沿いに咲く白と赤の小さな花は、いつも可憐で、夏の終わりになると出会うことができる。
車を路肩に停めて花をゆっくり眺めているときに、これまで島で過ごした夏のことやその時に作っていたジュエリーのことが少しずつ記憶に蘇ってきた。
私は花が大好きで作品のモチーフにしたりジュエリーと一緒に写真を撮ったりもしてきたけれど、
その折々に過ごした時間は季節の花と一緒に記憶となって今でも大切に心の中に仕舞われている。
なのでこの白とピンクも不思議と新しく感じられる。同じ花のはずなのに。
シャンパンゴールドのリングをコツコツと作っている、まだまだ暑さの残る9月、お二人とご一緒するオーダーメイドの日々をまたいつかの未来にふとしたきっかけで思い出すことがあるのだろうな、と今を愛おしく思う。
犬を連れた散歩の人が通りかかって、「花の写真を撮っているのですよ、この赤と白の小さなやつ」といつまでも名前が出てこないのも一人で面白かった。アポロチョコレートみたいなやつ、といえば島では案外みんなわかってくれたりするのだけれど。
お二人の結婚指輪作りは山道で例えると下山道に入りました。
お二人の結婚指輪はお揃いの素材とデザインでお作りするのだけれど、
ペアのリングはぴたりと同じ形というよりかは、つけた時にふわりと全体的に同じ雰囲気が漂うような感じが素敵だと思う。
彼のリングは彼のリングであり、彼女のリングは彼女のリングである。
そう考えていくと、それぞれのリングには微妙ではあるけれど変化を与えるべきことはたくさんある。
お二人とは夏のアトリエでサンプルリングをお試しいただいて、彼女のリング幅を0.2mmだけ細く仕上げることにしている。
7.2号と小さなサイズなので、厚みも抑えめにする。
彼女には繊細で軽やかな印象がとてもよく似合うだろうと思ったからだ。
そしてもちろん、全体の仕上がりには彼のリングと同じ雰囲気を与えなくてはならない。
繊細なスタイルでも丈夫にお使いいただけるのがゴールドの素晴らしいところだと思う。
作業の手を止めて一呼吸を置いて眺めてみると、必要なことはほぼ全て完了していることに気がついた。
これ以上削り取る部分はないように思えたし、全体のバランスがうまく取れているようだった。
あとは丁寧に表面に磨きをかけていくだけだ。
じっくりと進めていこう。
明日もきっとよくなる。
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