これからリングの削り出しを始めるところなのだけど、
本格的な造形作業を始める前に、その下準備にかなりしっかりとした時間をかける。
小さなリングの表面には、何本もの罫書きラインを正確に描いて寸法を取っておく。
マジックを使ってリング1周を囲む波模様も描いた。
料理で言うところの下拵えみたいなものだろうか。
実のところ、見えないところに費やすタッチの方が多かったりもする。
ここでの細やかな所作が仕上がりの美しさを左右する。
職人仕事とはこういうものなのである。
作業机の上をすっきりと片付けて、鉄鋼ヤスリとルーペを用意した。わくわく。
ここからは何も考えず、一気に手を動かしていく。
夢中になってしまい、時間がとても短く感じられるのは、いつものことかもしれない。
まずは大きく深呼吸。
プラチナリングに波のリズムを刻み込んでいく。
自然の中に遊ぶこと。そこに漂う神秘のようなもの。
オーダーメイドをご一緒しているお二人とは、
大切なフィーリングで繋がっているような気がしています。
夕暮れ時には作業の手を休めることが出来た(休めなくてはならなかった)ので、いつものビーチまで出かけた。
西に沈む太陽を眺めることができるのは、小さくて丸い島暮らしならではの喜びだと思う。
アトリエに戻り夕食を取った後に、夜の部の作業を始めた。
朝、マジックで描いてあった波模様のラインはプラチナが作るシャープなエッジに置き換わっている。
両側面からそのエッジまではのラインは、丸く柔らかい。
カーブを帯びた面が重なり合う場所が少しずつずれるようにして、エッジが波の模様を描いていく。
不確定さに満ちているように見える海の中にも、このような整合性を感じることがある。
自然が織りなすラインの美しさが好きだ。
晴天の七夕は久しぶりだったかも。
作業を終えると、アトリエの照明を落とし、庭先に出て星空を眺めた。
外は思いのほかひんやりと涼しくて、快適な夏の遊び場所を思い出す。
もちろん、お天気とか、見える場所見えない場所もあるだろうけれど、
それでも今日は、みんな同じ空を眺めているのかなと思うと、幸せな気持ちになる。
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