ここ最近、アトリエに篭り結婚指輪を作っていて、
その工程にあまりにも没頭しすぎていた。
周りで何が起きているかわからなくなるほどだった。
ヤスリと金槌、シンプルな道具だけを共にして、
手の中で造形を繰り返す指輪作りは
あらかじめルートが予定されているのではなくて、
目的地があって出発地点があるだけの船旅のような作業でもあり。
右に触れたら左に舵を取り直して、
遅れたら早く進む。
今目の前にある出来事をどうするか、それだけが見えていた。
時には風がおさまって、快適に進むこともあれば、
海が荒れて転びそうになるときもある。
でもその状況全てが作品の一つでもあって、
航海を終えた時には、
なんとも言えないフォルムと出会うことができるのです。
たった一つのジュエリー。
シャンパンゴールド結婚指輪作りの、1、2、3。
出来上がった指輪を手に取ると、
たった今、手の中で小さな息吹が生まれたような感覚に包まれた。