屋久島サウスのアトリエです。いよいよシロツメクサも満開になってきた。晩春、ということだろうか。庭先に、散歩道に出会う花々に癒されながらお二人の結婚指輪を作っている。
お二人が暮らす宮古島では屋久島とまた違った植物に出会えるのだろうか。南国調の陽気な花とかも咲いているのかな。一足先に季節の巡りをキャッチする、遥か南の島に思いを馳せながら作業机に向かう時間は色鮮やかな印象に包まれている。
そうこうするうちに百合も紫陽花も開花が始まりつつある。植物たちの力強い歩みに並んでジュエリー作りを進めてゆこう。
そうなのだ、お二人のリングもお花がテーマになっているのだから。
手の中に彼女のリングと鉄鋼ヤスリを1本。造形を始める前に深呼吸をする。
リングの表面を丸くするところまで、ここからは手を止めないで一気に走り抜けたい。
リングの表面にゴールドとプラチナの柔らかなグラデーションが現れた。きらりと輝くものに心惹かれるのは何故だろう。削り落とされたばかりの質感に生きているような感じを覚える。生きていることは揺らいでいることなのかもしれない。手作業から生まれるこの有機的な揺らぎは、何事にも代え難い貴重なフィーリングだと思う。
さて、いよいよ作業も折り返し地点をターンした。同じ素材のスクエアシェイプとラウンドシェイプではあるのだけれど、お二人の結婚指輪は二つ並べて一つになるような、あるいはもともと一つだったような、強いつながりを感じられるように仕上げてゆきたい。
花も海も空も、お二人の暮らしの中にある情景が、キュッとリングの中に収められ、育まれている。
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