今日も雨だったので、1日をアトリエで過ごすことにした。
庭先には梅雨がもたらした豊かな水をたっぷりと吸収して大きくなったバナナの葉が雨の雫を纏っていた。そして時折風に揺られてその雫をあたりに解き放っていた。
今年の島バナナは実を成してくれるだろうか。
作業の合間には薄くスライスしたトーストをリベイクして久保養蜂園さんから届いたばかりの蜂蜜をたっぷりとかけて食べた。
雨の日には雨の日の喜びがある。
バナナが実るのを心待ちにしたり、友人が作った蜂蜜を食べたり、ハイビスカスの枝をもらって挿木をしたりと、ここのところはずっとアトリエの周辺で過ごしているような気がするけれど、なかなかに色鮮やかな今年の梅雨である。
日々の暮らしの中にあるささやかな出来事がいつも幸せをもたらせてくれている。
そして、お二人の結婚指輪作りがこの季節を一度だけのもににしてくれているのだと思う。
日々に彩りをありがとう。
素敵な出会いにありがとう。
さて、今日のアトリエです。
ピンクゴールドのリングを造形する時間。
細部を丁寧に整えたり。
最初は目の荒い鉄鋼ヤスリだったのが、最終的には布地のように細やかさを持つスイス製の精密ヤスリに持ち替えて表面を磨き上げるようにそのヤスリを滑らせていった。
この段階に来ると、いよいよ仕上がりが近しいのだなといつも感じることになる。
ヤスリと反対側の手の側にはルーペが置いてあって、ワンアクションが終わるとルーペを除いてその細部に小さな傷がないかどうかを確認する。
そして表面を極く薄く捲るようにピンクゴールドを削り取り、それらの小さな傷を取り除く。
今回は最終的につるりと鏡のような表面に仕上げるので、ここでしっかりと平らな面を作っておきたいところだ。
最後にもう一度大きく形を変化させる工程までやってきたところでピンクゴールドを炎の中に包み込んだ。
金属には面白いところがあって、緊張をしたり、ふわりと緩んだり、その硬さを時間や状況によって変化させる特徴を持っている。
鉱物ではあるのだけれど、ジュエリーを作っているときは呼吸をする生物と対峙しているように感じられてならない。
それが楽しさの一つでもあるのだと思う。
いや、気がつけばゴールドだけじゃなくて、雨だって、風にも息吹を感じている。
それは島に暮らすようになって得た一番大きな変化なのかもしれない。
あるいは暮らしの中にあるほんの小さな息吹のようなもの、それらを感じることがわたしにとっての幸せなのかもしれない。
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