屋久島サウスのアトリエです。造形のひと段落したリングは太陽の光の下でアウトラインを眺めるようにしています。次の工程までに少しインターバルを開けて、一呼吸を置くようにして。
大きくなったハイビスカスの木陰で手に取ったり、
柔らかな夕暮れ時の太陽にかざしてみたり。
彼女が選んでくれたピンクゴールドは鉄鋼ヤスリでガリガリしてくるりとリング状にしたところまでを書きました。夏休みだから、というわけではないけれど、島リズムのスローな制作時間にお付き合いいただきましてありがとうございます!
うん、でもとてもいい具合に造形作業は進んでいる。小指サイズの小さなリングではあるけれど、確かな重みを感じられるし。同時にふわりとした軽やかさもある。
ここからのタッチ一つひとつひとつが更なる息吹を与えてゆくところなのだけれど、島のリズムとともに歩んでゆけば大丈夫だろう。チョウチョも飛び交っていたし、きっと。
さて、造形作業は鉄鋼ヤスリ1本を持って、休まず一気に手を動かす。
もちろん、設計図や寸法もある。けれども、ここまで彼女と話してきた物語が大切な道標になっているような気がする。
揺らぎとリズム、時の巡り、今ここにある確かな繋がりと
夕暮れ時、パン屋からの帰り道。
車から降りて海を眺めていて、しばらくしてからようやく虫の音に包まれていることに気がついた。とても大音量なのに、なぜか心地よくて、あることを忘れてしまうのだ。そういえば、本当に美味しいものを食べているときは素材だったり味付けについて考えたりしないものだけれど、それと同じことだろうか。わたしも同じように心の深い部分にタッチするようなリングを造形できるだろうか。これから始まる工程を心の中で先に辿ってみる。
そういえば、彼女は大切な日に海を眺めることにしていると言っていたな。この海も良さそうだ。リングを受け取りに来てくれた時に伝えたい海がたくさんある。
トースターで焼いてバターを塗った食パンと熱いコーヒーをいただいてからの、作業の続きへ。
1日の終わりに、リングの表面に1本のラインが現れた。リングをぐるりと囲む波のような。
毎日つけることが大前提の指輪だから、表現を与えるキャンバスはどうしても小さくなるので、シンプルにそして印象深い揺らぎがそこにあればいいと思います。
小さな印象は日々積み重なって深い部分に響きを与えてくれるから。何気なく、そして永遠に。
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